
こんにちは。
縄文工作家の松本ジュンイチローです。
2017年4月1日に、名古屋にレゴランドがオープンすることで今、レゴへの注目が高まっていますが、「縄文」もレゴとは切っても切れない関係にあるのをご存知でしょうか。
レゴは縄文的だ
いつからかはわかりませんが、わたしの実家にもレゴがありました。みんなで遊ぶよりひとり遊びのほうが好きだった幼い頃のわたしは、よくレゴで遊んでいたものです。
あまり多くないパーツの中でどうやりくりして自分のイメージしたものを作るか。関節の組み方を工夫して首と足が動く首長竜を作ったり、同じ色をやりくりしてオリジナルの戦闘機を作ったりして楽しんでいました。作るだけではなく、壊すときもまたひとつのカタルシスがあったものです。
だからこそ、レゴは、とても縄文的だと思うんですよ。
というのも、土器は大抵、レゴと同じくバラバラになった状態で見つかるんです。それを組み合わせて、もとの形に補完しつつ修復するので、レゴと同じく想像力も試されます。また、土偶もあえて破壊された状態で見つかることが多いんです。「呪術的な力を持った土偶を分解して土に埋めることで大地に力を還元した」だとか「体の悪いところを破壊して回復を祈った」など、いろいろな説があります。組み立てたものをバラしたり、また組み直したり。破壊と再生、まさにレゴは縄文的だといえますよね。
そこで、切っても切れない関係にある「縄文」と「レゴ」とをコラボさせた、縄文的なレゴキットを開発することにしました。その名も「レ土キット」。これさえあれば、どんなに忙しい現代人の方でも、時間をかけることなく簡単に縄文土器を作ることができますよ。
縄文土器が作れる「レ土キット」を開発しよう
とりあえず、子どもの頃に親しんだレゴを改めて入手しましょう。
購入したのは「黄色のアイデアボックス」。レゴの基本パーツが入ったセットです。開けてみると、色とりどりのパーツが。子供の頃に触れていたレゴよりもずっと色数が多く、きれいな色がたくさんありました。
ひとまず、説明書にあるものを作ってみます。
文字はなく、図のみでわかりやすく描かれた手順通りにレゴを組み立てていくと、
スクーターができました。こんなに複雑な形もレゴでできてしまうんですね。かっこいいです。ウインカーやライトも透明のパーツできちんと表現されています。
さて、レゴで縄文土器を作る「レ土キット」をどうすべきか。
なるべく基本的な汎用性のあるパーツで、子どもでも作れるようなものにしましょう。
縄文的な想像力を駆使して、縄文土器の特徴をどのレゴのパーツで表現するか考えながら、組んではばらしてまた組み直す。手と頭脳を両方駆使するこの感覚、子どものころに戻ったような気がして、夢中になっていました。
レゴのパーツはひとつひとつの完成度が高く、加工してしまうことに少々ためらいがありましたが、どうしても土器の模様を再現したいので、削って縦の溝をつけたり、斜めに縄文風の跡をつけたり、粘土の紐を貼り付けたりして表現することにします。
理想としては茶色のパーツだけで作りたいのですが数が足りないので、他の色のものを茶色に塗装することにしました。塗装すると、塗料の厚みの分、パーツ同士のかみ合わせが悪くなるのが難点ですが、あくまで今回はキットの試作品ということで。
このように、いくつかのレゴのパーツを作りました。パーツにはなるべく互換性を持たせて、模様を入れ替えたりできるように意識しています。結果、6種類の土器が作れる「レ土キット」が完成しました。
縄文のプロに「レ土キット」を評価してもらおう
完成した「レ土キット」ですが、果たして縄文のプロから見てどうなのでしょうか。早速、フリーマガジン『縄文ZINE』の編集長である望月さんの事務所にお伺いしました。
望月さんの本業は、デザイン会社の社長さんですが、縄文時代が好きすぎて、縄文がテーマの雑誌を自分で作ってしまったという、筋金入りの縄文好きです。
すでに6巻まで発行されている「縄文ZINE」。「縄文を現代向けにわかりやすく伝える」という目的を追求した結果か、尖った企画が盛りだくさんのフリーマガジンになっています。縄文好きや歴史好きの間でじわじわと話題になっており、バックナンバーはすでに入手困難との噂も。

一体、何ごとですか。

誰でも縄文土器が簡単に作れるレゴキットを開発したので、意見を聞きたいんです。6種類の土器の型式を表現しているので、筋金入りの縄文ファンから見ても分かるかどうか確かめたくて。

あんまり縄文好きが変な人だという印象を広めるのはやめていただきたいんですけど。

(縄文ZINEだって相当変だと思いますが……)まあまあ、まずはこちらを見てくださいよ。

これは分かります。火焔型土器ですね。新潟の。

さすがです。これが一番自信作なので、わかってもらえてよかったです。

ただ、少し気になるんですけど、なんというか……解像度が低くないですか?

えっ?

なんか四角いですよね。

ああ…… 汎用性が高くなるように、なるべく基本のパーツで作ろうとしたんです。丸いパーツは数が足りなくて。
その他の5種類についても、「レ土キット」を一つひとつ望月さんの目の前で組み立てて、意見を聞いてみました。

火焔型土器の別系統、王冠型土器ですか。これはちょっとわかりにくいかもしれませんね。

関東でよく出土する、加曽利E式土器ですね。四角いのがどうしても気になります。

これはいいですね。似ているかどうかはともかく。顔面把手付土器は最も女子ウケのいい土器とも言われていますよ。

井戸尻式土器は勝坂式土器に含まれます。粘土紐の扱いが特徴的なので、そのあたりをもっと再現してほしいです。

円筒土器ですね。円筒上層式ですか。背の高いシルエットからなんとなくわかりました。

資料と見比べて真剣に検討する望月さん。

これでひと通りの土器を見てもらいましたが、どうでしょうか。「レ土キット」、商品化されたら売れますかね。

改善すれば行けるんじゃないでしょうか。あとはやはり角ばっているのが気になりますね。もっとたくさんのパーツを使って大きいものも作ってほしいです。

なるほど。ありがとうございます!

事務所で飼っている猫(カタギリさん)も興味津々のご様子でした。
目指せ! 夢の「縄文レゴランド」
縄文ファンのお墨付きを得た(と解釈しました)ので、すっかり自信がつきました。
この「レ土キット」、6種類の縄文土器だけではなく、パーツを組み替えて、自分だけの新型縄文土器を作ることもできます。縄文時代にも、地域間の交流によって土器の型式が混ざり、新たなタイプが生まれることもあったようですから、それと同じですね。

これがわたしの考えたアルティメット縄文土器だ!
おまけに作った土偶のミニフィグ「ミニフィ偶」も添えて。
せっかくなので「レ土キット」のパッケージも考えてみました。
最近話題の「Nintendo Switch」のゲーム「ゼルダの伝説 ブレス オブ ザ ワイルド」では、縄文時代のようなテイストをその世界観に取り入れているそうです。そのおかげで今、縄文時代は海外から注目されています。
この流れに乗れば、「レ土キット」も世界的にヒットするんじゃないでしょうか。もし、商品化された際には、みなさんもぜひ手に取り、縄文土器を作る手間を大幅に短縮していただけたらと思います。
もし、大ヒットすれば、その売り上げを資金にして「縄文レゴランド」を創設することも夢ではないかもしれません。レゴでできた竪穴式住居に住んでみたり、貝塚からレゴを発掘したり、レゴ石器でレゴ獣を狩ったり、レゴどんぐりを集めてレゴ土器でアク抜きをしたり……そんな三内丸山遺跡(青森にある縄文時代の遺跡)のような夢のテーマパーク「縄文レゴランド」。
夢に一歩近づきました!